肝癌の血管新生にVEGFが関与しているかを検討した。ノーザンブロット法および、免疫組織染色法により検討したところ、肝癌組織が肝癌細胞株において、VEGFの強い発現をみとめ、肝癌血管新生へのVEGFの関与が示唆された。又、ウエスタンブロッテイング法にて、肝癌細胞株からのVEGFの分泌が確認された。VEGFのレセプター(flt)の発現は、肝癌部では無く、肝非実質細胞で強い発現をみとめた。これらの結果から、肝癌の血管新生は、オートクライン機構ではなく、パラクライン機構でおこり、肝癌の増殖に関与していると考えられた。又、VEGFが肝で強く発現する様なトランスジェニックマウスを作成し、現在解析中である。又、VEGF遺伝子のノックアウスマウスの作成を準備中である。 一方、血管新生を抑制するアンギオインヒビンが、肝癌の新しい治療薬となりうるかを、ウッドチャック肝癌の系を用いて検討した。局所投与及び全身投与で腫瘍の縮小効果があることが確認された。又、肝動脈を介しての栓塞療法でも効果のあることが判明した。 以上、肝癌の血管新生へのVEGFの関与が強く示唆され、又、血管新生抑制物質であるアンギオインヒビンが、肝癌の新しい治療薬となりうることが考えられた。 今後は、VEGFをブロックすることにより、肝癌の治療が可能とならないかを検討する予定にしている。
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