研究概要 |
我々は以前にARDS、DIC、肺血栓塞栓症において血中トロンボモジュリン(TM)が上昇し、TMが血管障害のマーカーになることを報告した。本年度は、血管炎の合併が多くみられる膠原病患者(SLE,RA,ベーチェット病,全身性硬化症,多発性筋炎,皮膚筋炎)の活動期に血中TMが上昇し、膠原病における血管障害の評価に有用であると報告した(Am J Clin Pathol)。またウェゲナー肉芽腫症において活動性の指標とされる抗好中球細胞質抗体との比較において、血中TMの方がより臨床経過と相関して変動すること、さらに免疫組織学的検討で比較的正常な血管部分でTMの染色性が保持されているのに対して、血管炎の強い部分でTMの染色性の欠落がみられることから、血中TMが血管障害の存在および程度を反映していると報告した(Chest)。経過を追えたSLE患者で血中TMが上昇した場合、原疾患の悪化かあるいは血管障害の存在(血栓塞栓症・TTPの合併)が考えられ報告準備中である(Int J Cardiol)。 DICの発症に重要な役割を果たすとされる組織因子(TF)の血中濃度を各種疾患で測定した。正常人では血中TFは1.49±72pg/mlで性別・年齢による差は認められなかった。DIC、TTP、血管炎症候群、糖尿性細小血管症および慢性腎不全患者の透析前後で上昇がみられ、血中TFは血管障害およびTFを含む組織の破壊によって上昇すること、さらにTFと腎機能(Cr)との相関が認められないことからTFの代謝経路はTMのそれとは異なることが示唆された(Br J Haemetol)。今後、症例数を増やして他の凝固線溶系検査、血管障害のマーカーとの比較検討を行っていく予定である。
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