研究概要 |
平成6年度は基礎的研究としては、各種増殖因子および血管作動物質の腎での遺伝子発現の調節および細胞内情報伝達系に及ぼす影響を検討した。腎ネフロンセグメントにおけるserine/threonine kinase cascadesの構成成分であるraf-1-kinase,MAP-kinase-kinase,MAPkinase,s6kinase、の存在および、各種ホルモン、増殖因子による活性調整について検討した。また遠位尿細管のモデルとしてMDCK細胞を用い増殖因子および浸透圧によるraf-1-kinase,MAP-kinase-kinase,MAPkinase,s6kinaseの活性調節を明らかにした。また近位尿細管のモデルとしてOK細胞を用い増殖因子およびcAMPによるraf-1-kinase,MAP-kinase-kinase,MAPkinase,s6kinaseの活性調節を明らかにした。これらの検討によりserine/threonine kinase cascadesの構成成分であるraf-1-kinase,MAP-kinase-kinase,MAPkinase,s6kinaseがintactの腎ネフロンセグメントにおいて存在すること、および生理的に重要な各種ホルモン、増殖因子による活性調整をうけていることを明らかにした。また血圧調節因子として重要なC-type natriuretic peptide(CNP)およびその受容体であるB-type guanylate cyclaseの腎内での局在およびcGMPの産生について検討をし、CNPは主に腎糸球体と血管系に発現し受容体は腎ネフロンセグメント全般において存在することを示した。臨床的研究としては、lgA腎症の患者糸球体においてPDGF-bata chainおよびB-receptorの遺伝子発現が亢進していることを症例を増やして論文投稿中である。また腎炎発症のkey factorである、メザンギウム細胞における情報伝達系および細胞周期制御のメカニズムを細胞生物学的および分子生物学的手法を用いて解明するため、MAP kinaseをはじめとするserine/threonine kinase cascade、cyclin D,cdk4,cdk6,p21,p27,p53などの因子がどのようにメザンギウム細胞の増殖を制御しているかを検討するしている。以上のように申請者らは細胞増殖、細胞周期のkey factorであるserine/threonine kinase cascadesの腎内の存在、調節を明らかにし腎炎発症の解明への新しいアプローチをこころみた。
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