ウシ胎仔軟骨組織より精製したコンドロモジュリン-IをクロラミンT法により[^<125>I]標識した。コンドロモジュリン-Iには、8個のシステイン残基が含まれており4個の分子内ジスルフィド結合が存在する。このために、通常の標識方法では標識体の化学構造が変化して生物活性を失うことが明らかとなった。また、逆相HPLCによる精製条件検討では、溶媒に含まれるアセトニトリル濃度を高くして分離能を向上させるとコンドロモジュリン-Iが失活することも明となった。そこで、Transforming Growth Factor-βのように活性発現にジスルフィド結合様式が、不可欠な成長因子で実施された還元条件を用いない方法の改良を行った。 次に、ChM-I前駆体cDNAをpcDL-SRα296に組み込んでCOS細胞に発現させた。回収された培地中に精製ChM-Iとほぼ等しい分子量約25kDaを示す幅広いバンドが検出された。そこで、COS細胞の培養上清から、発現された組換えコンドロモジュリン-Iを精製して、そのN末端アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列は、ウシ胎仔組織から精製した天然型コンドロモジュリン-Iのそれに完全に一致した。ところが、培養上清に回収される組換え体の収量は安定しなかった。この点を詳細に検討した結果、コンドロモジュリン-Iは、血清アルブミンと強力に結合することが明らかとなった。現在のところ、アルブミンとの有効な解離条件を検討している。その一方で、血清アルブミンとの強力な複合体形成能は、石灰化軟骨に血管が侵入したあとの組織からの急速なクリアランスの機構を示していると想像される。
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