前年度までに、ウシChM-I前駆体cDNAを発現するCHO細胞株の樹立に成功した。しかし、発現した組換えChM-Iが血清アルブミンと強く結合して培地に回収される。そこで、アルブミンとの結合を回避するための細胞培養条件の検討を行なった。しかし、CHO細胞株におけるChM-Iの発現レベルは、培養血清濃度に強く依存することが明らかとなった。すなわち、アルブミンとの会合を避けるために血清濃度を低下させるとChM-Iの発現量も低下するので、回収されるChM-Iの大部分はアルブミン結合型となった。次に、アルブミン結合型ChM-Iを出発材料に精製方法を検討した。ブルーセファロースカラムにアルブミン/ChM-I複合体は、ほぼ定量的に吸着するものの、1Mグアニジン塩酸のような強い解離条件のもとにおいてもChM-Iの回収率は約5%と低かった。そこで、現在、ChM-I前駆体cDNAの3′側ドメインを他の可溶性蛋白との融合蛋白として発現・回収する方法を検討している。そこで、ウシ胎仔軟骨から精製された天然型ChM-Iを用いて、ChM-Iのin vivoにおける血管新生抑制活性を検討した。脱灰骨基質による異所性骨形成を利用した。ウシ胎仔軟骨から抽出される粗画分(ChM-Iを含む)を脱灰骨基質に浸漬してヌードマウス背部筋膜下に移植した。移植3週間後、対照の脱灰骨基質は軟骨形成を経て骨に転換されたが、軟骨粗画分では血管侵入が阻害されるために軟骨形成の段階で骨形成は停止していた。そこで、ChM-Iのヘパリン結合性を利用してヘパリンセファロースに結合させた精製ChM-Iを同様にヌードマウスに移植した。その結果、抽出粗画分同様に骨形成が血管侵入過程の阻害により軟骨形成の段階で停止することが判明した。従って、ChM-Iがin vivoにおいても強い血管新生阻害活性を示すことが明らかとなった。
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