研究概要 |
本年度は動脈硬化の成因におけるサイトカインの役割を明らかにする目的で、1.血中の単球の動脈壁への移入における血管内皮細胞接着分子の意義、2.血管内皮細胞の接着分子の発現に対するサイトカインの作用、3.血管平滑筋の増殖に対するサイトカインの作用機序、4.動脈硬化巣におけるサイトカインの発現、につき検討した。結果は以下のとおりである。1.ヒト臍帯静脈内皮細胞およびRamos細胞を用いて、抗VCAM-1抗体が単球の血管壁への移入を阻害することを示し、単球の内皮下への移入には接着分子が必要であることを明らかにした。2.VCAM-1の発現に対するカチクチン/TNF、IL-1、IL-4、インターフエロンgamma(IFNgamma)の影響については、(1)IFNgammaがカチオン/TNFによるVCAM-1の発現を濃度依存性に増強すること、(2)その効果は経時的に増強し、その結果VCAM-1の発現が著明に延長すること、(3)IFNgammaはIL-1、IL-4によるVCAM-1の発現に対しても同様の効果を示すこと、(4)IFNgammaはVCAM-1の細胞表面からの消失を抑制すること、を明らかにした。(2)平滑筋に増殖については、PDGF、アンギトテンシンIIの増殖促進作用がコレステロール合成阻害剤であるプラバスタチンにより抑制されることから、これらのサイトカインの作用がG蛋白の活性化を介することを示した。3.in vivoでは、ヒの動脈硬化巣におけるTGFbeta1,2,3およびLTBPの組織化学染色とin situ hybridizationを行ない、TGFbetaは内膜肥厚部の平滑筋に、LTBPは平滑筋と間質に強い発現を認め、動脈硬化巣の形成進展にはTGFbetaが開与すると考えられた。
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