(1)beta-escinスキンド脳底動脈では、pH6.0におけるADP処理後にはTritonX-100スキンド標本とは異なり、張力発生のCa^<2+>感受性が完全に失われることはなく、また発生張力の著しい低下が見られた。pH6.5におけるADP処理では発生張力の低下が幾分抑えられ、Ca^<2+>感受性の明かな上昇が観察されたことから、脳底動脈スキンドファイバーにおいても酸性下ADP処理によりMLCPの不活性化が生じうるが、beta-cscinスキンド標本ではTritonX-100スキンド標本に比べるとMLCP不活性化が起りにくく、また何らかの理由で張力発生能が低下するものと考えられた。 (2)低濃度TritonX-100とL-ニトロアルギニン前処置によりそれぞれ内皮を物理的あるいは機能的に除去したウサギ摘出脳底動脈無傷標本を用いてアゴニスト刺激による収縮に対する内皮細胞の関与を調べた。セロトニンによる収縮は内皮除去により全ての濃度範囲で収縮力の増強が見られた。一方ヒスタミンによる収縮では、内皮除去により低濃度領域でのみ収縮力増強がみられ、最大収縮力は変化しなかった。このことは内皮細胞はセロトニン収縮に対しては非拮抗的に、ヒスタミン収縮に対しては拮抗的に作用し高濃度のヒスタミンによる収縮には内皮の関与は殆ど無いことを示している。従って今後、クモ膜下出血後脳血管れん縮とMLCP不活性化との関連を更に確かめるために、intact脳血管標本での高濃度ヒスタミン収縮を指標にして細胞内pH低下及びADP蓄積の効果を検討する予定である。
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