本研究は動脈硬化巣に血栓が生じやすい原因を血管内皮細胞における抗血栓性因子トロンボモジュリン(TM)の発現低下機構の解析から明かにすべく計画された。本研究によって以下の新知見が得られた。 1.正常内皮細胞の膜表面で抗血栓機能をあらわすTMは動脈硬化巣に蓄積する酸化型低比重リポタンパク質(酸化LDL)の酸化程度の増加に比例して抗原量および抗血栓活性が低下する。 2.その発現低下はリソゾームでのTMの分解亢進によるものではない。 3.その発現低下はTMmRNA量の低下にもとずく、TM蛋白の生合成低下による。 4.その発現低下はスカベンジャー受容体経路を介するものではなく、酸化LDL中のリゾレシチンや酸化コレステロール以外の酸化脂質が原因物質であることが明かになった。 5.内皮細胞TMの酸化LDLによる低下はレチノイン酸および細胞内cAMPを上昇される物質によって抑制されることが明かになり、薬物開発の糸口が開かれた。
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