1.血小板粘着反応の測定系の検討 我々は先にコートしたコラーゲン繊維への血小板の粘着反応を静的な状態で測定する方法を開発した。この反応の性質をより明かにする目的で、GPVI欠損患者血小板の粘着反応を測定したところ初期の結合反応(粘着反応)が特異的に欠損していた。また血小板の凝集反応を特異的に抑えることが知られているRGDペプチドやrhodostominは後期の結合反応を特異的に阻害した。このことからこの測定系で血小板の初期の粘着反応と後期の凝集反応を別個に測定できることが示された。またコラーゲンと血小板の反応に影響を与えることが報告されている種々のペプチドを合成してその影響を見たが、明らかな作用を認めるものはなかった。このことはコラーゲンの立体構造が血小板の粘着反応に大きく関与していることを意味している。また各種蛇毒成分を検索した結果。マムシ毒中にコラーゲンへの血小板粘着反応を特異的に阻害する成分が存在することを見出した。現在その作用を解析している. 2.血小板膜蛋白GPVIの精製検討 GPVIを欠損する患者血小板(3例)が血小板のコラーゲン粘着能を欠損することから、GPVIがこの反応に関与していることは明かである。血小板膜分画からGPVIの精製を進めているが、1)GPVIは血小板膜の微量成分である、2)膜中のプロテアーゼにより分解を受け易い、3)良い同定法がない、などの理由によりまだ成功していない。部分精製標品を用いてモノクローナル抗体の作製を試みたが、GPVIに対する抗体は得られなかった。しかし、主なコンタミ蛋白に対する抗体が得られたので、この抗体の抗原蛋白の同定と得られた抗体のGPVI精製への利用を現在検討している。
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