ヒト血管内皮細胞はその増殖に線維芽細胞成長因子(FGF)を必要とする。FGFを培養液から除くと、この細胞は休止期に入ることなく細胞数を減じてゆく。この細胞死はタンパク合成阻害剤によって防止されることから、致死タンパクの合成を伴う、遺伝子発現を介した能動的な細胞死であることが強く示唆された。すなわちヒト血管内皮細胞は、FGF飢餓によりアポトーシスが誘導される。これは生体のヒト血管の機能、維持、老化を解析する上で極めて重要であると判断された。平滑筋細胞は、内皮細胞に隣接する細胞である。この細胞はFGFを産生することから、生体内において血管内皮細胞の生存維持因子は、パラクリン的に平滑筋細胞が供給するものと思われる。 一方、生体に存在する物質で、アポトーシス誘導にプラスに作用するもの、あるいは細胞の増殖や機能を阻害するものとして、TGFβ、アルキルリゾフォスフォリピド、NO等があげられた。補体系はアポトーシス誘導を修飾した。生体外由来では出血性ヘビ毒やLipid peroxideが内皮細胞に毒性を示し、特にヘビ毒は効率よくアポトーシスを誘導した。これらの因子に対する感受性の、内皮細胞の細胞老化に伴う変化を検討した。 これらをいずれも詳細に研究し、10編の論文にまとめた。印刷中の1編を除き、既に学術誌に掲載されている。
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