研究概要 |
生態学的に妥当な刺激構造の抽出にもとづいた、人間の知識形成とその構造の分析を目的として実験的研究を行った。研究は現在も進行中であり、結果は随時学会等に発表の予定である。以下にその概要を述べる。 歩行パターンをシミュレートした生体運動(biological motion)の認知について、特に足の動きに関する分析を実験的に行った。その結果、予測されたような、接地時間/滞空時間という高次の変数を観察者が直接に知覚し、分類判断に用いていることを実証するには、現時点で至っていない。実験結果は歩行の速さに大きく影響されている。歩行パターンの高次の構造を抽出するためには、速度・大きさ等の標準化が必要であり、これらを考慮した実験が進行中である(1994,第58回日本心理学会に発表予定)。さらに時間的変数のより詳細な分析のたに、フレーム単位の制御を可能とするビデオ編集機を必要とするため、早稲田大学教育学部所有の機材を使用した分析を予定している。 一方、文敵研究等から、人間の生態学的刺激に対する知識形成を個体発生の観点から検討することがきわめて有効であることが新たに示唆された。すなわち、乳児(生後4ヵ月前後)において対象既念の形成が可能となるとともに、生体運動が知覚されるという資料が報告されており、今回の研究においてもこの点についての研究を加えることとした。現在4ヵ月児を用いた予備的研究が進行中であり、その結果を発表予定である(1994,第36回日本教育心理学会)。
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