本年度は山梨県及び近畿圏の教師との面接調査が継続的に行われた。面接対象は小学校、中学校、高校の教師、養護教師にわたっている。個人面接の一部が了解のもとテープに録音されており分析中である。また、一部の面接は終了後、教師自身が考察をレポートにまとめるという協力を得ており分析の対象とされている。面接調査を終えた現時点の印象では、不登校児に積極的にかかわろうとする教師群と、消極的な教師群とがあり、積極的な群では不登校児との関わりが教師自身にも肯定的に還元されていた。すなわち、関わることで教師自身の教育観を深化させたり、教師として職業意欲につなげているようである。一方、消極的な群では不登校が教師の指導の失敗事例であるととらえて教師に対する否定的な評価を恐れていたり、両親の養育の問題とし、これを非難することで関わりから回避していたりする。積極群の一例をあげると崩壊家庭の不登校児に積極的に関わり児童児童相談所との連携のもと児童を心理的に支え続けた経過があげられる。児童の個人的な状況が相当困難であっても、学校場面で関わる教師として果たせる役割があり、教師として十分に関われたことが当該教師の職業意識をより高めたことが確認された.しかし、このような関わりを持とうとする教師を積極的に認め応援する意識や体制が学校内に乏しく、当該教師は学級運営と当該児との関わりの調和をとることの困難が訴えられた。しかし、本事例では当該児童を見捨てることなく関わり続けた担任教師の姿勢に学級集団員が触れることによって、学級としての活動も活発になったという。消極群の例では、不登校を否定的にとらえる傾向があり、それ故に性急に再登校に導こうとする意識が強い。しかし性急な登校刺激は失敗することが多く当該生徒に対しても自己に対してもますます否定的なとらえかたが強まることがうかがわれた。本調査より、教師が不登校をどのように受けとめるかという要因が、その後の関わり方や、教師の職業意識へのフィードバックの方向性に作用することが推測された。
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