〈目的〉「まなざし]とは、ある人がある対象に向けての実際の視覚行動に加えて、その底流をなす内面的な心の働きも含む、方向と力を持つベクトルである。また、自己評価は、発達的に自己を対象化することによって成立しているが、それは他者の視点から自分を見ることと関連している。本研究では、特定の他者のまなざしの意識について調査を行い、さらに自己評価との関連を明らかにすることで、自己へのまなざしと他者のまなざしの意識の関わりの構造的なモデルを提示することを目的とした。 〈結果と考案〉他者のまなざしの意識については、発達的に高まること、男女差では女子がどの年齢でも高かった。また、他者からの賞賛や非難をどうに感じるかについては、年齢が上がるほど、恥ずかしさや当惑が増え、無関心や嫌悪といった否定的な感情も多くみられた。他者が自分をどのようにみているかの推定につては、年齢が上がるほど複雑になったが、自分が他者をどう見るかについては、余り違いはなかった。自己評価については、年齢とともに、自信、自己受容、優越・劣等感などに分化し、まなざしの意識は特に他者との比較によって生じる優越劣等感との関連が高いことが明らかになった。 今後の課題としては、他者認知についての、発達的な検討と、一般的な他者からのまなざしをどのように内面化していくのかを明らかにすることが挙げられるだろう。
|