1.まず、以前から続けてきた英語動詞形態素習得に関する研究の最終的まとめを行った。その成果は、Roger Andersen(UCLA)との共同研究として、2本の論文がStudies in Second Language Acquisition(Cambridge University Press)とHandbook of Language Acquistion(Academic Press)に、また、白井単独の論文が、First Language(Alpha Academic)に掲載予定(印刷中)。これらは、動詞形態素の習得が内在アスペクトに強く影響を受けていることを立証し、その原因を論じたものである。 2.日本において日本語を習得中の中国人の発話データを録音、コンピューターファイルとしてデータベース化し、形態素「てい」と「た」について、内在アスペクトとの相関を調べた。その結果「た」には、瞬間動詞との非常に強い相関が見られ、「てい」には、活動動詞との強い相関が見られた。また、状態動詞、(それに類する)形容詞には、ほとんど「た」は使われなかった。この結果、第二言語としての日本語習得においても、内在アスペクトが動詞形態素に強い影響を与えることがわかった。(この研究は、1994年10月にMcGill大学で行われるSecond Language Reserch Forumに、研究発表として応募してある。) 3.動詞形態素「ている」と「た」の内部構造を、プロトタイプ理論の枠組みにおいて調査した。方法は「自由記述」で、「ている」「た」のイグゼンプラーを短時間でできる限り多数記述してもらう、というのもである。現在分析の途中であるが、暫定的結果として言えることは、「ている」については、「結果状態」を表すものよりも「動的の進行」をあらわすものが多数記述されており、こちらが「ている」のプロトタイプではないかと、ということである。この結果は、日本語の第一・第二言語習得において見られる結果と一致する。
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