1990年の老人福祉法等8法改正(以下、「90年改革」)はわが国の市町村高齢者福祉行政に「計画化」と「分権化」という特徴を付与したが次のような三点の問題点が依然として残された。 (1)市町村での実施財源が不明確なまま在宅福祉サービスおよび老人施設入所措置事務移譲がおこなわれた、(2)市町村は高齢者福祉サービスを社会福祉法人、社会福祉協議会、「福祉公社」など各種の民間団体に「外部委託」する傾向が強まった、(3)委託された団体では福祉労働者のパートタイム雇用、「有償ボランティア」を活用するなど、地域福祉労働組織の確立が不明確なばあいが多いことである。 今年度の研究では以上の問題点に関して次のような調査・検討作業を行った。 (1)地方財政統計を用いて1980年代の市町村福祉財政の分析を行うことにより、「90年改革」に先立つ、80年代の後半の社会福祉関係の事務配分・財源配分の変更が、市町村財政に国庫支出金比率の大幅低下という影響をもたらしたことを明らかにした。 (2)老人保健福祉計画策定・実施においての市町村の財源が、特に在宅福祉サービス推進において十分でない点を明らかにした。 (3)高齢者福祉サービスの民間委託に関しては、社会福祉法人への措置委託と措置費についての調査研究を行った。 (4)外国の高齢者福祉の分権化動向に関してはイギリス等の文献研究とともにスウェーデンでの視察を行った。 なお、上記(1)(2)に関しては別記のように研究成果の発表を行ったが、(3)(4)についてはその作業中である。
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