当科学研究費補助金を得ての研究の目的は幾何学的測度論を偏微分方程式およびそれに関連する問題に応用することである。幾何学的測度論の偏微分方程式への応用としてはカレント理論に関する研究が盛んであり、最近でもGiaquinta-Modica-SoucekやAviles-Gigaらによって変分問題を中心とする偏微分方程式の問題にカレントが応用されている。しかしながら私の研究は主として幾何学的測度論のもう一つの話題であるヴァリフォルド理論の偏微分方程式への応用を目的としている。ヴァリフォルドに関連した研究としては、K.Brakkeや、Fujiwara-Takakuwaの仕事がある。さらにここ数年平均曲率流の研究が主としてlevel set techniqueを用いて盛んに研究されており、最近これらの結果とBrakkeの仕事との関連が調べられ始めている。このようにヴァリフォルドは非線形偏微分方程式に応用されているが、その研究の数はそれほど多くはない。ヴァリフォルドの理論はそれほど難しくないそういう長所はもっと活かされるべきであり、そのためこの研究に着手した。この目的のために当科学研究費補助金を利用して北海道大学等を訪問して、この分野での日本の中心的人物である北海道大学教授儀我美一氏や北見工業大学講師小俣正朗氏らと連絡をとることにより、この研究に関して有益な情報を得ることができた。そして測度論の一部である確率論との関係から、階数が空間の各点によって異なるような擬微分作用素に関する研究を行い、階数が一定の場合に従来から知られている結果がかなりこのような作用素にも拡張できることがわかった。これに関連する結果は現在確率論の研究者と共同で論文「Pseudodifferential operators and Sobolev spaces of variable order of differentiation」としてまとめているところである。
|