絶縁体微粒子をイオン導電体に分散させることにより、イオン伝導度が飛躍的に増加できることが知られている(絶縁体分散効果)。この絶縁体分散効果は、室温領域で使用可能な固体電解質の開発につながる極めて重要な現象である。本研究では、絶縁体分散効果のメカニズムを調べるため絶縁体分散型イオン導電体のイオン伝導を調べ、パーコレーションの視点にたって解析を試みた。 本研究では絶縁体分散効果に分散絶縁体の構造的差異が及ぼす影響を調べるため、組成が同じで構造の異なる絶縁体を分散させた試料を用いることに着目し、銀イオン導電体であるAgIに、粒径を統一したルチル型TiO_2とアナターゼ型TiO_2を分散させた試料を用いて電気伝導度測定の実験を行った。 その結果、ルチル型TiO_2とアナターゼ型TiO_2ともに体積分率25%付近で、電気伝導度がルチル型TiO_2で約10^3倍、アナターゼ型TiO_2で約10^4倍と最大の伝導度増加を示し、最大の絶縁体分散効果を示すことを確認した。この結果から組成が同じTiO_2でも分散させる粒子の構造により絶縁体分散効果に約10倍の差が現れることが判った。 この様な2種類のTiO_2の間の絶縁体分散効果の違いはTiO_2の構造に起因すると考えられる。 また、計算機を用いた2次元格子ネットワーク上で、イオン導電体に絶縁体を分散させたときのイオンの伝導経路に対するのパーコレーションのシミュレーションを行った。しかしながら、実際の系で伝導度が最大になる分散濃度で、2次元格子上のパーコレーションが切れてしまうことが判り、3次元系でのシミュレーションの必要性が認識された。
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