1.本研究のテーマである燐酸塩岩、海緑石岩について、秋田県藤琴地域及び北海道宗谷地域において野外調査を行ない試料を採集した。また、宗谷地域に付いては、地上試料の他にボーリングによるコア試料を入手した。 2.これらの試料と既に採集済みの米国西海岸モンテレ-層の燐酸塩岩と共に、岩石顕微鏡、走査電子顕微鏡による観察及び粉末X線回折分析、蛍光X線分析(主成分分析)、EPMA分析、ICP質量計による微量成分分析などを行った。海緑石については可視分光計により色を測定した。現在、総有機炭素量分析、抽出性有機物から生物指標有機物(biomarker)特にステロイド系有機物の分析を継続している。 3.海緑石について、X線回折と化学分析及び色測定の結果を総括する予定であったが、2価鉄の定量が思うように進まず、これに付いては分析方法の改良が必要な状態である。 4.秋田県藤琴地域よりの試料より、燐酸塩鉱物と海緑石の共成関係が初めて見いだされた。 5.モンレテ-層の燐酸塩岩からは、特殊な産状の燐灰石と、ここでは未記載の燐酸塩鉱物(brushite)を見い出した。これらは、弱いCe異常と右上がりのREE組成で特徴ずけられた。産状と化学分析から、この燐酸塩岩は、海水もしくは堆積面直下での沈澱の後にリワークを破ったことが推定される。 6.秋田県仙北地域の燐酸塩岩のSEM観察からバクテリアのコロニーが見いだされた。ここでの燐酸塩岩の形成には、ある種の硫酸還元バクテリアが関与していることが考えられ、ステロイド系有機炭素を指標として、バクテリアの活動度の研究を継続している。
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