合成ダイヤモンドにおける同位体質量分別および同位体効果に関して次に挙げる二つの課題について研究を行った。それぞれに関して得られた結果並びに現在の研究の進行状況を述べる。 1、^<13>C/^<12>C比の異なる試料の高圧合成とその熱伝導率測定および精密構造解析による^<13>C同位体効果の検証。 ダイヤモンドの合成には5-7GPaの圧力下で触媒金属中から析出させる方法と13GPa以上の高圧下でセキボクから直接変換する方法がある。本研究では触媒金属による結晶の汚染を避けるため、直接変換により^<13>C/^<12>C比の異なるダイヤモンド試料を合成し、その粉末X線回析データをもちいてRietveld法による結晶構造の精密化を行った。高圧合成は岡山大学地球内部研究所の6-8分割球型超高圧発生装置を用いて、圧力15GPa温度2000℃の条件で行った。合成試料は^<13>Cが0%および90%である。セキボクからダイヤモンドへの変換率をほぼ100%にすることに成功した。得られたダイヤモンド粉末のRietveld解析の結果、^<13>Cが0%の試料では格子定数がa=3.5667Aであるのに対し^<13>Cが90%の試料ではa=3.56274Aとなり同位体効果と考えられる僅かな格子定数の違いが確認された。現在のところ、熱伝導率測定並びに非調和熱振動解析のための単結晶構造解析を行うには合成される試料の粒径が小さすぎて、その遂行には至っていない。 2、高温高圧下で溶融状態にある鉄、ニッケルおよびその合金から炭素がダイヤモンドとして析出する際の質量分別係数の温度圧力依存性の決定。 ニッケル及び鉄-ニッケル合金を触媒金属にし、既設の六方押し高圧発生装置を用いて^<13>C/^<12>C比の異なる数種類のダイヤモンドの合成を行った。既設SIMSを用いた質量分別係数の測定のために必要な残留セキボクの除去、試料成型などを現在検討している。
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