研究概要 |
モレキュラーワイア-(分子電線)は分子素子-分子素子間の電子伝達あるいはエネルギー伝達を行なう。従来の分子電線では電子移動反応の律速は両末端における電子の授受であった。今回の申請はモレキュラーワイア-による二分子膜間の電子輸送効率を向上させるため、電子授受を金属ポルフィリン錯体でおこなう新規モレキュラーワイア-の設計と合成を目的とする。 研究は具体的には以下のように進めた。本研究においては合成ルート探索以外にシステムの設計が必要であった。即ち,合成した分子電線を人工リポソームに垂直にモレキュラーワイア-を配置するとき,膜中で分子電線の安定性と分子電線存在下での膜の安定性を考慮する必要がでてきた。 (1)二分子膜構造を不安定化しないような分子電線(両親媒性物質)の分子構造を検討した。即ち,両親媒性物質とリポソーム膜との相互作用は吸収スペクトルで鉄3価のジチオナイトによる還元反応を追跡することにより行った。同時に動的光散乱法により前後のリポソームの粒径の変化を調べた。界面活性物質にはPEG(Mw750;50,000),PEI(Mw70,000),CTAB,SDS,Triton X-100を使用した。還元剤ジチオナイトは4mMで使用した。PEG(Mw750,低濃度:6.1x10^<-3>M)の場合酸化還元反応速度はブランクと変わらない。ところが界面活性物質PEG(Mw750)の濃度を高めていくと(0.014M),Fe3+の還元速度がブランクに比べ減少することがわかった。さらに系に加えるPEG濃度を高めていくと(0.036M),吸光度の増大が観測されるようになった。Triton X-100(3.0mM)を加えた場合,酸化剤の吸光度の減少が外水相に還元剤を加えると同時におこり,リポソーム膜の破壊がおこったと考えられる。またTriton X-100を低濃度(0.3mM)使用したときはこのようなことは観測されず,還元速度の加速効果のみが見られた。 この結果は平成6年度高分子学会年会(名古屋)で発表する予定である。 以上の結果を基に分子電線を設計し現在合成経路を検討である。
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