シダ類の中から世代時間が短く、通年栽培ができる熱帯性のミズワラビを材料に選んだ。これまでのHickok、Banksらによる研究の蓄積があることからHnn系の栽培を試みた。申請した光照射用恒温庫を用いて同時に100個体の胞子体をバ-ミキュライトと液体肥料(ハイポネックス)を用いた培地で培養できることがわかった。また、液体培養で配偶体を培養し、実験材料とすることにも成功した。これらの材料を用いて、全DNA、RNAを抽出した。ミズワラビには大量のポリサッカライド状の物質が含まれており通常の方法(Hasebe and Iwatsuki 1990)では、純粋なDNAを単離することができなかったが、CTABを用いて数回抽出することにより克服できた。RNAは植物で通常用いられるグアニジン法で抽出できた。アラビドプシスの花芽形成遺伝子であるAgamousとそれに深く関係しているleafyのクローンを用いてlow stringentな条件でゲノミックサザンを行ったところ、薄いバンドを検出することができた。さらに感度を上げるため、両遺伝子の保存的な部分のオリゴヌクレオチドを合成し、プローブとして用いたところアラビドプシスからのクローンを用いた場合とほとんど同じ断片にハイブリダイズしたので、これらの遺伝子のホモログが花を付けないシダ類にも存在している可能性が高いことがわかった。さらに全RNAからpoly(A)+RNAを精製し、合成したオリゴヌクレオチドを用いてRTPCRを行ったところいくつかの断片をクローンすることができ、これらのクローンはミズワラビのゲノミックDNAとハイブリダイズした。現在、この断片の塩基配列を決定中である。さらに、RTPCRによってできた断片と先にゲノミックDNAにハイブリすることを確認した合成オリゴヌクレオチドを用いて遺伝子をスクリーニングするため、ゲノミックとcDNAライブラリーを作成した。現在これらのプローブを用いて相同な断片の探索中である。今後、これらの遺伝子のクローン化、塩基配列の決定を順次行い、配列データを種子植物の花芽形成遺伝子と比較し、その進化について考察する予定である。
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