本研究では、非線形分散性媒質と広帯域の近縮退四光波混合が可能な位相共役波発生器を組み合わせた系における光パルス波形の挙動を調べ、これによって光パルスを整形/圧縮する新しい手法を研究することが目的である。研究成果を以下に記す。 (1)非線形分散性媒質を伝搬したガウス形光パルスが、帯域が無限大で電力反射率が1の位相共役波鏡で反射されて、再び同じ媒質を逆方向に伝搬する場合の光パルス波形の変化を数値解析した。媒質に非線形性が存在する場合も、入射端では元のパルス波形が再現できることがわかった。 (2)上記と同様な系で位相共役鏡に利得あるいは損失がある場合について波形の変化を数値解析した。利得がある場合は入射端に戻ってきたパルス幅は入射時より大きく、損失がある場合は入射時より小さくなることがわかった。したがって損失のある位相共役鏡はパルス圧縮に利用できることがわかった。 (3)波長分散と長さの積が等しい二つの光ファイバ伝送路の中間に帯域が無限大で電力利得が1の位相共役波発生器を置いて光信号の波形歪みを補正する方法における、光ファイバの非線形性の効果について検討した。分散が小さい光ファイバを伝送路として用いた場合はピーク電力が数mW以下ならば、受信端で元の波形がほぼ復元できることがわかった。ことに分散が負の場合は、パルスは常に広がるために光ファイバの非線形効果が小さくなり、前半と後半の光ファイバの分散が大きく異なる場合でも波形の復元が良好に行えることがわかった。 (3)上記の理論の検証のための実験を、光パルス発生器・光ファイバ・位相共役波発生器(半導体レーザ)により試みた。光パルスの電力が小さく、位相共役波発生器の効率が悪いため、波形歪みとその補正効果を観測するには至らなかった。より効率の良い、光ファイバによる位相共役波発生器の構成について検討中である。
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