研究概要 |
視覚障害者(疾病や事故による中途失明者)にも有効なオンライン手書き入力システム構築のため,ストローク相互位置に依存しない手書き漢字認識アルゴリズムの検討を行った. はじめに,全盲の視覚障害者らから,手書き漢字のサンプルを収集した.この入力実験により全盲者でも中途失明者であれば,オンライン手書き入力が可能であることが確かめられた.次に収集したサンプルデータを基に,視覚障害からくる文字変形特性を分析を行った.調査の結果,視覚障害者による手書き漢字は,ストローク相互で重なりや分離が生じやすく,特に偏や旁などの部分パターン間で変動が大きくなる傾向が見られた.このため,従来の文字全体でのストローク相対位置行列を用いて認識を行う手法を直説用いることはできないことが分かった.そこで、個人差によって癖や変動の異なる漢字からでも安定した漢字認識を行うため,画数や筆順などのオンライン情報を個人辞書に登録する方式を採用した.これに併せて,個人内で安定な画数情報から漢字候補を絞り込む、画数情報と線素情報を用いた漢字大分類法,および、筆記時の筆運びに着目したストローク間移動ベクトル特徴による認識アルゴリズムを提案した.教育漢字1006文字を対象とした分類実験の結果,本手法の有効性が確認され,視覚障害者向けのオンライン手書き漢字入力システム開発への見通しが得られた.
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