研究概要 |
溶媒抽出法は工業的に優れたレアメタルの分離精製法であるが、分配比の類似した金属どうしの相互分離は容易ではない。そこで、溶媒抽出法に光還元反応を組み合わせ、逆抽出段階で特定の金属を還元して選択的に逆抽出して高度分離する手法について検討した。まず、VとMoの分離プロセスについて検討した。低圧水銀灯やハロゲン灯を光源として用いた光照射によって、水溶液中および有機相(両金属を抽出した第四級アンモニウム塩酸塩のベンゼン溶液)中のVは5価から4価または3価に光還元された。両金属を含む有機相と水相を混合しながら光照射することにより、Moのほとんどを有機相に残したままVを選択的に水相に還元逆抽出できた。逆抽出率は100%に達し、1回の抽出-逆抽出により分離係数として最高で約2000の値を得た。続いて、Eu^<3+>の光還元反応を組み込んだ溶媒抽出プロセスによるEuのSm、Gdからの分離について検討した。Sm,Eu、Gdは、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸のヘキサンまたはシクロヘキサン溶液に抽出した。ラジカルスカベンジャーとしてギ酸イソプロピルを有機相に添加し、1M硫酸アンモニウム水溶液と接触させながら低圧水銀灯を光源として光照射することにより、有機相中のEu^<3+>はEu^<2+>に光還元され、水相中で硫酸ユーロピウムとして選択的に沈殿分離できた。3成分を等量含む有機相からの逆抽出プロセスにおけるEuの回収率は最大89%、得られた沈殿中のEuの純度は約95%であり、逆抽出の段階での分離が可能であることを確認した。また、いずれのプロセスにおいても、逆抽出後の有機相は新たな抽出に再利用できることを確認した。光還元逆抽出においては、抽出剤の希釈剤(有機溶媒)、ラジカルスカベンジャー、光源の波長、水相のpHなどの選択が、目的金属の回収率や純度に大きな影響を及ぼすことがあきらかとなり、新規な分離プロセスとしての設計指針を明らかにできた。
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