1.三酸化タングステン半導体超微粒子の光化学特性 1)タングステン酸ナトリウムを蒸留水に溶解して、これに濃塩酸を加えてタングステン酸の沈殿を得た。これを濃いシュウ酸水溶液に溶解して三酸化タングステンとした後、凝集を防ぐために1wt%のモンモリロナイト粘土を加えて調整した(WO3/clay)。加える粘土量が1wt%よりも少ないと、吸収スペクトルの210nmの吸光度に比べて330nmの吸光度が増大し、その吸収スペクトルがWO3コロイドに近づくことがわかった。 2)蒸留水に分散させたWO3/clayの吸収端からバンドギャップエネルギーを、直接遷移の式に当てはめて求めると3.3eVが得られた。バルクのバンドギャップエネルギー2.7eVに比べて0.6eV増大していることがわかった。また、Hyperbolicband modelに基づく粒径とバンドギャップエネルギーの関係式から粒径が約0.8nmと推定された。 3)WO3/clayの水懸濁液に電子アクセプターとしてRu(NH3)6^<3+>、犠牲剤としてシュウ酸を加え、対極と作用極を白金板、参照極をSCEとして1室セルで磁気攪拌しながら500W超高圧水銀ランプ光を照射すると、光酸化電流が観測された。しかし、測定後にRu(NH3)6^<3+>が粘土層問に取り込まれて担体である粘土の凝集がおこった。 2.三酸化タングステン半導体超微粒子の光・放射線照射によるタングステンブロンズ化 1)WO3/clayの水懸濁液及び白金板塗布試料にに500W超高圧水銀ランプ光を照射すると、青色に着色した。前者では窒素下の方が変化が早かった。電子アクセプターであるRu(NH3)6^<3+>水溶液を加えると両者とも消色した。また、光照射前後でのタングステンイオンの価数変化を調べるため、ESRスペクトルを測定したが青色の試料においてもシグナルは観測されなかった。 2)WO3/clayの水懸濁液に^<60>Cogamma線8.7Gy直接照射したが、色変化はみられなかった。 今後の研究の展開 1.光照射により生じる酸素ラジカルをDMPOで捕捉して溶液のpHと生じるラジカル量の関係からWO3/clayの伝導帯位置を決める。2.gamma線照射によって担体に生じる2次電子のWO3による捕捉をESRにて検討する。
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