本研究では環境汚染の主因物質の一つである窒素酸化物の大気中への排出量を制御するため、計測が簡便な抵抗変化測定方式を保持しつつ、選択性の優れた個々の排出源に設置可能な小型軽量、しかも、安価なセンサの実現を目指した。そのため、被検ガスとの反応性の観点から根本的に見直し、酸化性の強い窒素酸化物(一酸化窒素、二酸化窒素)と選択的に、かつ、迅速に反応する銅、ニッケルの酸化物をセンサ材料として選んだ。 酸化ニッケル-酸化銅を種々の割合で混合した結果、酸化ニッケル、酸化銅の比が2:1で最大の感度が得られた。そこで、酸化ニッケル、酸化銅を2:1の割合で混合した系に各種希土類酸化物を添加し、二酸化窒素に対する検出感度を調べた。希土類を添加したニッケル-銅系酸化物は酸化銅が固溶した酸化ニッケル、希土類酸化物、希土類-銅の複合酸化物、酸化銅の混合体であった。センサ素子の感度は希土類酸化物の中でも酸化スカンジウムを添加した系でのみ上昇し、酸化セリウムでは改善されず、他の希土類酸化物の場合には感度は低下することがわかった。酸化スカンジウムを添加したニッケル-銅の酸化物の素子抵抗は二酸化窒素の濃度増加と共に減少するのに対し、一酸化窒素にはほとんど応答しなかった。二酸化窒素の濃度の増加時減少時共にほぼ等しいセンサ出力が得られており、再現性良く応答していることがわかった。 以上の結果より、スカンジウムを添加したニッケル-銅系金属酸化物をセンサ素子として用いることにより窒素酸化物中の二酸化窒素を選択的に検出できることが明かとなった。
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