研究概要 |
本研究では,(I)閉じたクラックを導入したガラス板を用いて一軸圧縮載荷時のクラックの挙動とAE発生の関係に注目したモデル実験を行った他,(II)一軸および三軸の先行応力を与えた花岡岩について一軸圧縮載荷時のAE計測を行い,両方の結果を比較検討することによって低応力レベル(ダイレイタンシー発生以前の応力域)における岩石のAEのカイザー効果のメカニズムを明らかにすることを試みた。 (I)のガラス板を用いた実験では以下のことが明らかになった。 (1)閉じたクラックが活発なAEを伴って滑った時は,除荷後にせん断変位が残留する。せん断変位が残留したクラックではAEのカイザー効果が現れ,AEの急増点は先行応力とよく一致する。 (2)カイザー効果によってAEが急増する応力(=先行応力の最大値)では,閉じたクラックのせん断変位が急増する。 (3)閉じたクラックの残留せん断変位は時間経過にともなって元に戻り,これによってAEの活性度も回復する。残留せん断変位が回復したクラックではAEのカイザー効果は現れない。 (II)の花岡岩を用いた実験では以下のことが明らかになった。 (4)花岡岩にダイレイタンシー開始応力以下の一軸先行応力を与えた場合,明瞭なカイザー効果が現れ,AEの急増する応力は先行応力とよく一致する。 (5)一軸先行応力を与えた場合のAEの活性度は先行応力除荷後の経過時間にともなって回復し,それに伴ってカイザー効果も不明瞭になる。 (6)三軸先行応力を与えた場合では,カイザー効果が不明瞭であり,その不明瞭なAE急増点は先行応力より著しく低い。 以上の知見を総合して,岩石の低応力レベルのカイザー効果のメカニズムを説明するモデルを提案して。
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