インヒビンの作用発現機構解析の一端として、精巣におけるインヒビンの局所作用に関し、以下の点について検討した。 1.インヒビンの標識法の検討 インヒビンのレセプターを解析するために、インヒビンのアイソトープによる標識法として^<125>Iを直接分子に導入する様々な方法を検討したが何れの方法によっても、生物活性が失われてしまった。そこで遊離のアミノ基に標識するポルトン・ハンター法を用いて標識を試みたが、本法によっても生物活性は失われてしまった。 雄ラットの精巣におけるインヒビンの発現時期と部位の検討 インヒビンの局所作用を検討する目的で、まず雄ラットの精巣におけるインヒビンの発現時期および部位を免疫組織化学法により検討した。その結果、胎齢15日に初めて陽性反応が認められた。胎齢16日には、精細管の形成が明瞭となり、インヒビン陽性反応は間質に限局して認められた。陽性反応はその後も引き続き間質に認められたが、出生後は減弱した。一方、精細管内では、胎齢20頃からセルトリ細胞に陽性反応が認められるようになった。 精巣発育過程におけるインヒビン関連物質の局所作用 ラット胎児精巣の精細管形成初期に認められたインヒビン関連物質の局所における役割を検討するために、胎児精巣のin vitro培養系を設定した。この培養系にウシ卵胞液より調製したインヒビン関連物質の混合液を添加したところ、胎齢14日の精巣原器では3日後に精細管内部から原始生殖細胞が消失した。この結果より、インヒビン関連物質が精細管形成過程で何らかの役割を持っている物と推察された。
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