研究概要 |
千葉県及びその周辺地域のスギ林内に生育する担子菌(スギ担子菌)を分離同定したところ、Strobilurus ohshimae(スギエダタケ)、Mycena rorida(ヌナワタケ)、Xeromphalina campanera(ヒメカバイロタケ)、Marasumiellus sp.(シロホウライタケ属)といった比較的小型な担子菌の生育が確認された。この4菌株について炭素源、窒素源の利用性、スギ樹脂成分による影響等について他の樹種で生育する菌類と比較しながら検討した。窒素源の利用性は上述した4菌株間で同様な結果を示した。炭素源の資化性は菌株間で異なり、幅広い資化性を示すもの(X.campanera等)、ばらつきを示すもの(S.ohshimae等)に分かれた。また生育に及ぼす培地pHも菌株間で異なり、S.ohshimaeは酸性側で、X.campaneraはアルカリ性側で生育が良好であった。一方、スギ材より樹脂成分を熱メタノールより抽出し、寒天培地に塗沫、あるいは液体培地に添加して各菌株に対する影響を検討した。寒天培地における検討では、他の樹種で見られる菌株や不完全菌は生育が抑制されるのに対し、スギ担子菌は耐性を示し、なかでも、M.roridaに関しては生育が促進された。また、液体培地ではS.ohshimaeの生育が比較的良好であった。以上より、スギ担子菌は個々の生理的諸性質は若干異なるものの、スギ樹脂成分に対する耐性機能あるいは資化能力を獲得していることが示唆された。なお、Xeromphalina campanera,Marasumiellus sp.はスギおがくず上で容易に子実体が形成したため、人工的に子実体を形成させることが可能となった。
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