細胞の反応の視覚化の1つとして、特にカルシウムチャネルの動態に着目した。細胞は当初は成長ホルモン分泌細胞のみを材料として扱ってきたが、抗体が他の下垂体細胞や神経細胞とも強く反応することから、それらの細胞について広く研究を行う必要が生じた。 まず、ジギトニンにて可溶化した細胞膜分画から多数のモノクロナル抗体を作製し、ニトレンジピンまたはオメガコノトキシンと免疫沈降するものをスクリーニングし、いくつかの抗体を得た。これらの抗体は、特にN型またはL型カルシウムチャネルやその結合蛋白を抗原としていることが確認された。まず、その結合蛋白のうち、分子量の小さい28KDaと36KDaの2種の蛋白は下垂体前葉細胞の細胞膜直下に、幅広く存在しており、細胞膜の裏打ち構造の1部を構成していることがわかった。また、それぞれのカルシウムチャネル結合蛋白の分布は、細胞膜に均等ではなく、下垂体前葉のそれぞれの細胞の細胞膜に不均一に存在していることが解った。また、それらの抗体の染色性はホルモンの分泌状態と良く相関して速やかに変動することが確認され、それらが共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて観察された。 残念ながら我々の予想に反し、分泌調節因子が細胞内に直接取り込まれていく像は、今回の実験では認められなかった。しかしながら、ホルモン分泌機能とカルシウムチャネルの変化を直接観察できる手段を得たことで、ホルモン分泌のメカニズムを解析する上で大変有効な手法を得ることができたと思う。
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