当初の目標1〜4のうち1〜3はほぼ達成された。4は成体型アイソフォームのクローニングであるが、他研究室よりクローニングの報告がなされ予定変更となった。以下に1〜3の項目について要点を記する。1.変態の前後で蛋白泳動パターンを比較した結果、変態期に新たに出現する筋アイソフォーム(成体型アイソフォーム)と変態期に消失するアイソフォーム(幼生型アイソフォーム)の存在が数多く確認された。さらに詳しく解析する為、特にトロポミオシン(TM)とミオシン重鎖(MHC)に着目した。TMは、変態前では、alpha型のみであったが、変態後はalphaに加えてbeta型が出現した。MHCは、変態前の幼生型アイソフォームから変態後は成体型アイソフォームへと切り換わった。2.アフリカツメガエル筋細胞培養系確立の為、24℃にて筋芽細胞培養を試みたところ約3〜4週間の培養期間の後に横紋構造を有する筋繊維が形成された。培養日数の短縮とクローン培養化が今後の課題として残った。3.特異的抗体を用い成体型アイソフォーム発現の部域特異性と開始時期をイムノブロット及び免疫組織学的に詳しく調べたところ胴・尾・肢の3つの部域間で、成体型遺伝子の発現開始時期に違いがみられた。またさらに背筋の成体型への変換は体軸に沿って前方から後方へと進み勾配があることが明きらかとなり、変態期の遺伝子発現に勾配の概念が初めて導入された。またつぎに成体型筋アイソフォームの発見にホルモンが関与するかどうかを調べる為、個体にホルモンを与えて筋アイソフォーム発現への影響を調べたところ、成体型MHCの発現は甲状腺ホルモン(T_3)により背筋及び肢筋において誘導されたが尾筋では誘導されなかった。このようにT_3作用もまた体の部域毎に違っていることが判明した。
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