研究概要 |
当教室では、精液中には腎由来の膜結合型gamma-glutamyltransferase(GGT)(分子量84kDa)とは分子量・アミノ酸組成が異なる所謂精液GGT(分子量250kDa)が高活性で存在することを確認しているが(Biochim.BiopHys.Acta.1077,259-264,1991)、触媒反応のメカニスムは未知のままであった。今年度は文部省科学研究費補助金の援助を受けて精液GGTと腎GGTを酵素反応速度論的に比較解析した。その結果、精液GGTのアミノ基転移反応のメカニスムは、腎GGTと同様にPingPongBiBi機構であることが明らかになった。又、donorのKm値は両酵素間でほぼ等しかったものの、acceptorのKm値は精液GGTでは腎GGTより約2倍大きい値を得た。更に、acceptorによる基質阻害の程度は精液GGTの方が腎GGTよりやや強い傾向が伺われた。これらの結果より、精液GGTと腎GGTは反応速度論の観点からも異なる酵素であるという結論を得た(投稿中)。一方、至適pH、acceptorの基質特異性、及び2価カチオン等の酵素反応に及ぼす影響については両酵素間に差異は認められなかった。 更に、精液GGTの構造決定の為に、2つのsubunitのN-末端のアミノ酸配列を分析した。そのうち、精液GGTのheavysubunitである150kDaのN-末端のアミノ酸配列は"AKGFYITK・LLILGI"であり、既報の腎GGTのheavysubunitのアミノ酸配列"LKKKLVVLGLLAVVL"とは全く異なる結果であった。精液GGTはこの点でも腎GGTとは異なる蛋白であり、しかも他に同じアミノ酸配列をもった蛋白が検索されないことから、未知蛋白である可能性は極めて高いと考えられた。 以上の結果を基に本研究テーマを更に発展させ、精液GGTが腎GGTと異なる酵素蛋白であることを最終的に明らかにするために、精液GGTのcDNAクローニング実験を開始している。
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