研究概要 |
気管支鏡で採取した早期扁平上皮癌病変およびその辺縁に存在する境界病変における癌抑制遺伝子および癌遺伝子の発現について検討した。 対象は当科において診断した胸部X線無所見の早期肺扁平上皮癌例59例、境界病変14例で、対比としてX線写真陽性の進行肺癌14例、正常気道上皮15例の合わせて102例である。これらの症例のP53癌抑制遺伝子、C-erb-B-2,c-myc癌遺伝子について免疫組織学的手法(SAB法)で検討した。 その結果、C-erb-B-2,c-mycの発現は早期肺扁平上皮癌では観察されなかたが、P53の異常は扁平上皮癌の進展度別に以下の如き頻度で観察された。 以上の検討結果から、早期扁平上皮癌においては発癌過程における早期の段階から、p53遺伝子の異常が関与している可能性が示唆された。一方、この異常は、癌の深達度の進展とは必ずしも相関しなかった。また、P53遺伝子の異常が確認されない症例もみられ、一部の症例では肺癌発生過程でP53癌抑制遺伝子の異常を伴わない、発癌経路も考えられた。
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