研究概要 |
1.研究目的: 神経細胞に特異的に存在する解糖系酵素の1つ,r-subunit enolaase(neuron specific enolase:NSE)を経時的に測定することによって,蘇生後脳症の予後判定の指標によりなり得るかを検討した。 2.研究方法: (1)研究に先だって患者家族に本研究の主旨を説明し,同意を得た,蘇生後脳症症例20例を対象とした。 (2)血中NSEの測定は,経時的に採血後に遠心分離し,凍結後にRIA法で測定した(正常値<10ng/ml)。 3.研究結果: (1)20症例を予後によって,A群(正常回復群:2例),B群(軽度障害群:2例),C群(高度障害群:4例),D群(脳死群:4例),E群(循環不全死亡群死亡群:8例)の5群に分類した。 (2)A群を除いたB群〜E群の症例では,24時間以内に血中NSEが上昇したが,B群では数日で正常範囲内に復した。C群とD群では経過中50ng/ml以上の高値を,D群では100ng/ml以上の異常高値を示した。 (3)経過中,A群,B群とC群,D群,E群の間には有意な差がみられ,また,C群とD群の間にも第3病日に有意な差がみられたが,C群とE群間には有意な差はみられなかった。 以上から,神経学的予後判定上有用な指標になると思われるが,今後,髄液中のNSE値との相関や画像上の障害部位との関係について検討を加える必要があると思われる。
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