研究概要 |
マウス胎児の歯胚形成期から石灰開始期にあたる胎生12,14,16日齢に、Balb/C妊娠マウスの腹腔内に10^<6-7>Plaque-forming unitsのマウスサイトメガロウイルス(NCMV)を感染させた。出生後、仔マウスの体重、歯牙の萌出量および色調を経時的に観察した。麻酔下にて採血後、下顎骨を摘出し軟X線を照射し観察した。 MCMV感染群の仔マウスの体重は、出生後3週間までは非感染群と比較しやや低い傾向があったが、出生数の違いによる影響が大きいように思われた。胎生16日齢感染群の萌出量は、出生後3-4週において他の群より少ない傾向が認められた。色調については、胎生12日齢及び16日齢感染群において、出生後2-3週に黄色やグレーを帯びるものが、10-15%に認められた。また、軟X線写真により、出生後3-4週にかけて、エナメル質の形成量の少ないものや切縁部の破折を疑うものが数例に認められた。母親マウスの血中中和抗体価は、感染3週間目頃より上昇し2ヶ月を経過しても高い価で持続した。一方、仔マウスの血中中和抗体価は、出生後2-3週に一時上昇するがその後低下した。 他のヘルペス科ウイルスであるHSV-1型の弱毒株2株(F株、深山GC-株)を同様に妊娠マウスに感染させて検討した。HSVの感染量をMCMVの約10分の1量にしても、母マウスの死亡、出生数の減少や死産がみとめられ、経時的に歯牙への影響を調べるには不適当と思われた。 以上から、胎生期のMCMV感染がマウスの歯牙への影響を及ぼすことが示された。今後、下顎骨の切片標本を作製して検討し、ウイルス量、マウスの系、さらに幼齢マウスにおける感染の影響等について調べることが必要と考える。
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