近年、歯周病治療が奏功しない場合で、患者に糖尿病の既往がある場合が増えている。歯周病の動物実験モデルとして、マウス頭蓋冠を利用したカルシウム遊離能を測定する方法が広く用いられている。また、糖尿病の実験モデルとしてGK(後藤一柿崎)ラット(インシュリン非依存型糖尿病の病態に近い自然発症糖尿病ラット)は有用な実験動物である。しかし、実験動物にラットを用いて、カルシウム遊離能を測定する方法は確定しておらず、この有用な実験動物が十分に利用できない状況にある。今回の実験では、新生児のGKラットを頭蓋冠を摘出し、大腸菌由来リポ多糖含有液体培地で五日間培養し、培地中に遊離したカルシウム量の測定を行った。GKラットは1日齢あるいは2日齢を用い、大腸菌由来リポ多糖は100mug/mlまたは50mug/mlを使用した。液体培地にはBGJb培養液あるいはalphaMEM培養液を用い、それぞれの遊離カルシウム量の測定には、カルシウムC-test(Wako)を使用した。結果は下表に示す如くである。下記の結果に示すように、1日齢のGKラットをBGJb液体培地を用いて培養し、100mug/mlの大腸菌由来リポ多糖で刺激した場合に、最大の遊離カルシウム量が測定された。マウスで同様の実験を行う場合には、生後五日齢のマウスを使用するのが普通であるが、今回生後五日齢ラットを用いた実験では、表には示していないが、有意なカルシウム遊離は認められなかった。これはラットの方が体長が大きく、生後の頭蓋冠の石灰化が早い為と考えられる。今後、ラットにおいて本実験を行う場合には、前記の条件で行うことが、有意なカルシウム遊離を生じせることが示唆された。今後は、歯周病原性細菌由来のリポ多糖を用い、その比較を行う予定である。
|