久留米大学医学部口腔外科に9おける唾液腺悪性腫瘍一次症例20例についてMatrix Metallo-proteinase-9(以下MMP-9)、c-erbBlおよびc-erbB2遺伝子産物(以下pB1およびpB2)の発現について免疫組織化学的手法を用いた検索を行い、各々の予後因子としての有用性について検討した。対象は、1974年4月から1993年3月の20年間に当科で治療を行った唾液腺悪性腫瘍一次症例20例であり、その組織型の内訳は腺様嚢胞癌(以下ACC)13例、粘表皮癌(以下MET)7例であった。前記20例の生検時および手術時切除標本を10%ホルマリンにて固定後、通法に従いパラフィン包埋し、これより5mum薄切切片を作製、免疫組織化学的染色に供した。 MMP-9陽性例は、ACC13例中9例(69.2%)、MET7例中5例(71.4%)、計20例中13例(65.0%)であった。pB1陽性例は、ACC13例中6例(46.2%)、MET7例中2例(28.6%)、計20例中8例(40.0%)であった。pB2陽性例は、ACC13例中3例(23.1%)、MET7例中4例(57.1%)、計20例中7例(35.0%)であった。ACCのpB1陽性5例中、腫瘍最大径40mmを超えるもの0例、40mm以下のもの3例、pB1陰性8例中、腫瘍最大径40mmを超えるもの0例、40mm以下のもの8例を認め、pB1発現と腫瘍最大径は相関する傾向を示し、またpB2陽性例計7例中リンパ節転移陽性2例、陰性例5例、pB2陰性例計13例中リンパ節転移陽性1例、陰性12例を認め、pB2発現とリンパ節転移は相関する傾向を示したが、ともに明らかな有意差を見い出すには至らず、今回の検索の眼目であるMMP-9および遠隔転移、他の検索事項についても明らかな知見は得られなかった。
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