研究概要 |
肝臓へ直接もしくはその近傍へ投与する方法は、肝臓内局所へ薬物を浸透できると考えられるため、有用性が高いと思われるが、報告例がない。そこで、新規投与形態の開発の一環として、有機アニオン系薬物であるphenol red、bromphenol blue、bromosulphonphthaleinをモデル薬物として選び、まずin vivoの実験解析系を確立し、さらに肝臓表面へ投与した場合のモデル薬物の肝臓移行動態を速度論的に解析した。 Pentobarbital麻酔下(50mg/kg,i.p.)、Wistar系雄性ラット(250g)の肝臓表面(左葉)に円筒状のガラスセル(半径:4.5mm,7mm)を外科用アロンアルファを用いて装着した。緩衝液(pH7.4)に溶解させた薬物(3〜30mg/ml X 0.1ml)をセル内に投与し、経時的に血液および胆汁を採取した。投与6時間後、膀胱より尿を採取し、さらにセル内に残存する薬液を回収した。薬物の定量は吸光度法により行った。 半径4.5mmのガラスセルを用いてラットの肝臓表面へ投与したところ、いずれのモデル薬物も投与量の50%以上が6時間の実験終了時までの肝臓表面から吸収され、血中への出現および胆汁中への高率な排泄が観察された。また、これらの血漿中濃度曲線および胆汁排泄速度曲線は薬物間で大きく異なり、静脈内投与時と比較してかなり後ろへずれたような形となった。さらに、肝臓表面からの吸収率が投与に用いるセルの面積に大きく依存していることから、肝臓表面からの薬物吸収が確認された。このように肝臓表面からの薬物吸収性が比較的良好であること、そして投与部位近傍における薬物濃度の持続化が期待できることから、肝臓内特定部位への薬物の集積を目指した新規投与法として有用であると思われる。
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