研究概要 |
ベンズアルデヒドとビロールを酸触媒下で反応させると、ポルフィリンが生成することが知られているが、酸としてHBrやHIなどのハロゲンアニオンを有するものを用いた場合、第二主生成物に新しい色素化合物が生成することを見いだした。分光学的及びX-線単結晶構造解析から、この化合物が特異な構造を持つポルフィリンの異性体であることを明らかになった。すなわち、この新規環状化合物は、4つのピロールとそれを繋ぐ4つのメチレン鎖からなる環状テトラピロール構造を持ってはいるが、通常のポルフィリンとは異なり、環を形成するピロール窒素Nの1つが環の外側を向いている。そのため、環の中心には3つのNと1つの炭素Cが配置するという異常な構造をしている。言わばNとCが“ 混乱した"ポルフイリン異性体であるため、「N-混乱ポルフィリン(N-Confused Porphyrin,NC-P)」と名付けた。これまで、数多くのポルフィリン及びその類縁体が合成されてきた、ポルフィリン骨格自体の異性体は世界で初めての例である。これまでの初期的研究から、「N-混乱ポルフィリン」はポルフィリンと比べると“柔らかく"、平面性を壊して容易に種々の金属やアニオンと結合を作ることがわかった。合成条件を種々検討したところ、この反応はポルフィリンの前駆体であるテトラピロールが球状ハライドアニオンに巻き付くことで通常の反応が抑制されて起きた、所謂、「アニオン鋳型効果」によるものと考え得る結果を得た。
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