プラナリアは非常に高い再生能力を持つ動物である。特に、脳や目といった重要な器官までもが元通りに再生する頭部再生は、他の動物にはみられない現象である。私は切断後の再生メカニズムを解明するための足がかりを得るために、ストレスタンパク質の一つである90kDaの熱ショックタンパク質、HSP90に注目した。HSP90は熱などのストレスによって発現が高まるだけではなく、非ストレス下においても豊富に発現しているタンパク質で、発生や分化の過程においても特異的に発現が高まることが知られている。そこで本研究ではプラナリアのHSP90 cDNAをクローニングし、これをプローブとしてプラナリア切断後のHSP90 mRNA発現量の変化を調べた。 クローニングには、PCR法によって得たプラナリアHSP90 cDNAの一部をプローブとして用いた。プラナリアcDNAライブラリーは、35°C 15分間熱ショックをかけたプラナリアのmRNAを用いて作成した。スクリーニングの結果得られたプラナリアHSP90 cDNAのN末端側のDNA断片をプローブとして、切断後のmRNA発現量の変化を時間を追ってノーザンブロット解析した。その結果、時間経過に伴い始め緩やかに減少した後、18〜24時間にかけて一過性の発現量の増加が観察された。プラナリア再生においては切断後24時間以内に再生のための準備が完了するといわれており、HSP90 mRNA発現量の増加はHSP90が再生の初期段階で何らかの役割を担っている可能性を示している。以上のことからプラナリアにもHSP90が豊富に存在し、熱ショックに応答してその発現が高まることが確認された。さらにプラナリアの再生過程初期にHSP90 mRNAの発現が高まることが初めて示された。
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