研究概要 |
アフリカにおける民族間の関係は、しばしば「部族間対立」という差別的含意のある表現を用いて内戦や国家間の戦争など暴力的対立の原因、あるいは政治・経済システムの排他性や独占などの諸問題の原因とみる立場から取り扱われてきた。本研究は、否定的側面に偏った従来の民族間関係の理解に対する反証を地域研究の立場からエチオピア西南部におけるシダモとアルシ・オロモの事例を対象に、長期のフィールドワークに基づく参与観察の蓄積に基づいて試みた。初年度は、研究分担者のマモが、エチオピアのシダマおよびアルシ・オロモ民族の個別民族誌事例を収集して紛争と統合にかかわる民族間関係についての事例の検討を集中的におこない、代表者と共同してこれまで収集してきたフィールドワークによる実証的資料とのつきあわせをおこなった。その成果の一部は、日本ナイル・エチオピア学会「Arsii Oromo-Sidama Relations : An attempt to understand their past conflicts and present processes of integration」および日本アフリカ学会「Problems and Prospects of Education in Oromia Regional State : A case of highland Arsii Oromo areas, southern Ethiopia」においてそれぞれ報告した。また、研究分担者のマモは、短期間、アルシ・オロモ、シダマ地域を訪問し、現地でフィールドワーク資料の補筆をおこなった。受け入れ先の大学院アジア・アフリカ地域研究研究科においては、協力してアフリカにおける民族紛争と統合に関するフォーラムを立ち上げ、研究会を開催の準備をおこなった。また、これまでの研究成果をまとめて単著「Land, Local Custom & State Policies : Land Tenure, Land Disputes and Disputes Settlement among the Arsii Oromo of Southern Ethiopia」の出版をおこなった
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