仏教における女性差別や戒律についてはいくつかの優れた研究があるが、比丘尼の伝記についての研究はそれらに比べ非常に立ち遅れていると言わざるを得ない。Pali文献や漢文テキストいずれにも比丘尼の伝記に関する整備された研究は見当たらない。多少あるものも、パーリ語か漢訳テキストかどちらかに限っている。故に、次のように比丘尼の伝記のデータベースを構築したい。 当研究の主要目的は、パーリ三蔵とその注釈類に見られる比丘尼に関する情報、そしてそれに対応する漢訳仏典やサンスクリット語文献の部分も集め、それらを整理した形で提供することにある。先ず、比丘尼についての情報をパーリ語文献から抽出し、比丘尼ごとに個別のファイルを作成した。この際、固有名を持たない比丘尼については「その他」のファイルにまとめた。さらに、関連する論文などの情報も逐次追加した。なお、漢訳文献からの情報収集には大正新修大蔵経のCBETA版を利用した。 データベース全体の構築は次のようになる。トップページに日本語のページと英語のページが表記されている。各ページに「事業紹介」、「データベース」、「略語・参考文献」と「用語集」の四つの項目がある。「データベース」の項目から比丘尼の名前のページが開かれ、各比丘尼の名前がアルファベット順で表示される。なお、固有名が記されていない比丘尼たちは「その他」に含まれている。次は各比丘尼の名前からそれぞれの単純な個人データ、例えば、名前のバリアント、家系、カースト、出家動機などが記入されたページが開かれる。そして、そのページの最後に「伝記」のページがリンクされているので、個人データを読んでその比丘尼についてより詳しく知りたいと思う方のために便利である。 本データベースは近日中に大谷大学のホームページにおいて公開される予定である(http://web.otani.ac.jp/cri/nunsdatabase/)。
|