今年度は、文革期のプロパガンダ映画における人物造型のメカニズムを解析しつつ、文革期から改革開放路線の確立に至るまでのプロセスにおいて、映画や演劇が果たした役割を考察することに重点を置き、研究活動をおこなった。同時に早稲田大学演劇博物館の研究員として、演劇関連資料の分類・整理作業に従事したほか、シンポジウムの企画運営も積極的に参加した。 まず2005年5月14日、21世紀COE「演劇の総合研究と映画学の確立」東洋コース第二回定例研究会において、「映画『マンゴーの歌』における政治的リーダーの身体表象」と題した口頭発表をし、文革期のプロパガンダ映画における英雄的人物のメカニズムについて考察した。本発表の内容は2006年度内に早稲田大学映像学会紀要『映画学』に発表する予定である。 また2005年8月29日には、中国文芸研究会の招聘により、高知県で開催された「『映画のなかの上海』の合評会」にゲストとして出席し、映画における都市上海イメージの歴史的な変遷をテーマとしたスピーチを行った。 COEプロジェクトの一環として、中国演劇・映画に関するデータベース及び映像アーカイヴの構築に中心的なスタッフの一人として従事し、文革期に刊行された『人民日報』における演劇関連資料の分類・整理作業を完了させた。さらに、2005年12月9日と10日、同COE主催のもとに早稲田大学で開催された日中共同シンポジウム「演劇資料と演劇研究」に、企画から運営に至るまで参与した。 このほか、中国が文革期の極左的体制から経済成長を最重視する改革開放路線へとシフト・チェンジした端境期において、映画やテレビといった映像メディアがいかなる機能を果たしたかという問題を扱った長編論文『ポスト文革期の中国における映像メディアの役割(仮題)』(約一万六千文字)を現在ほぼ完成させており、2006年夏に上梓する予定である。
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