本研究では、目的達成のため以下の項目を設定し、研究を実施しました。 (1)先行研究と文献調査 (2)中国第一歴史档案館所蔵古文書の調査 (3)現地遺跡・遺物などの調査 (4)文献に現れた自然環境と人間活動の相互作用に関する内容の分析 以上に基づいて、2005年は七回にわたって設定した地域に関する歴史文書と遺跡などの調査を行いました。これらをふまえて清朝档案資料の中に記載されている甘粛、青海などの地域に関する史料を抽出し、特に明代から清朝後期までの人間の移動と災害について史料の収集と分類を行いました。その結果清朝時代の甘粛に関する統治政策が明らかになってきた。清朝時代に甘粛を経由して、ジュンガル・モンゴルと戦うために、甘粛に関する路程調査を行い、「クンドゥレンからサクサ・テフリクに至るまで、水と牧地がある。鎮番からエジネイに至るまでの間、大軍と人々が通過することができない。前に進むと、三、四百頭の家畜に足りる水がある。軍隊が前進して行けば、後ろのものには牧地がなくなる。この道は悪くて仕方がない。緊迫している人のみ通過する。行軍することが難しい」という報告が既に1697年頃に報告している(『満文親征平定朔漠方略』卷三十七、康煕三十六年庚戌)。このように、エジナ周辺地域の環境が既に悪化していたことが明らかになってきた。 また清朝時代の雨量の測量に関する記述については、これまで殆どその実態が知られなかったが、康煕時代の朱批諭旨の中から、「經筵講官頼都等奏報薫熏談祈雨情形折」(康煕六十年四月二十三日)と「禮部尚書頼都等奏報祈雨得雨情形折、康煕六十年六月十三日」いう題名の上奏文二件が見つかり、この中から雨量を測量するという事例を発見した。これによると雨量の測量方法というのは、地面を掘って水がしみ込んだところを観察し、その湿度を尺や寸という単位で計って報告するということであった。
|