これまでにポリカチオンの主鎖ポリ(L-リシン)と親水性の側鎖デキストランで構成されるくし型共重合体(PLL-g-Dex)を調製し、その人工核酸シャペロン活性を評価してきた。共重合体はDNA間の静電反発を抑えDNA間の認識性を向上させることで、ハイブリダイゼーションを数万倍促進し、人工核酸シャペロンとしての機能を発現することを明らかにした。本研究では、より高い核酸シャペロンの機能を持つ高分子の設計のため、生体系で核酸の結合ドメインとして存在しているカチオン性アミノ酸であるアルギニンに着目した。PLL-g-Dexの主鎖一級アミノ基を化学修飾することでグアニジノ基に変換した共重合体(GPLL-g-Dex)の調製法を確立し、NMR及びサイズ排除クロマト多角度光散乱法等によりキャラクタリゼーションした。その結果、本研究で用いた反応法により、共重合体のくし型構造を変形させずアミノ基からグアニジノ基への変換率を約100%まで任意に調節できることが示された。UV-融解温度測定及びゲル電気泳動法等により、合成された新規共重合体とDNAとの相互作用を評価した。2重鎖DNAの熱的安定化に与える共重合体の構造の影響を検討した結果、GPLL-g-DexはPLL-g-Dexと比較して2重鎖DNAの融解温度をあまり上昇させないということがわかった。また、両共重合体をDNAに対して競合的に作用させる解析から、GPLL-g-Dexの方がDNAに対し親和性が高いことが示唆された。さらに、ゲル電気泳動により解析から、GPLL-g-DexはPLL-g-Dexに比べ単鎖DNAへの親和性が高いことが見いだされた。これらの結果より、カチオン基としてグアニジノ基を導入することで、単鎖DNAへの共重合体の親和性を高められ、2重鎖DNAに対する安定化効果が抑制できることが示唆された。
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