研究課題
鉄鋼材料の強化機構と強靭化の関係について疲労強度を中心に以下の実験的研究を行った。(1)最も基本となる純鉄に近い工業用材料としてIF鋼を取り上げて、平面曲げ疲労強度および破壊挙動を検討した。常温大気中での疲労亀裂進展は結晶粒界に沿って起こる割合が多く、アルゴン雰囲気中にすると著しく減少した。この新しい知見より、大気中の水分から浸入する水素による粒界破壊機構を考察し、国内および国際会議において発表し、学術論文にまとめてInt. J. Materials Research(ドイツ:旧名Z. Metallkde)誌に投稿し掲載された。(2)次に、高強度・高延性鋼として注目されているTRIP→DP鋼の2種(590MPaおよび780MPaクラス)について、平面曲げ疲労特性を調べ、繰り返し変形中の応力誘起マルテンサイト変態が疲労破壊に及ぼす影響を調べた。変態量はX線回折により測定し、引張変形特性との関連を考察した。得られた結果を国際会議で発表し、学術論文にまとめてASM International(米国)に投稿し掲載が決定(2007年4月掲載予定)した。(3)続いて、(1)の水素によると予想される粒界破壊は、粒界への炭素原子の偏析によって抑制されると予想した。また、粒界破壊の原因として知られるPの粒界偏析が疲労特性に及ぼす影響、さらにこれらに及ぼす結晶粒径の影響を系統的に調べる目的で、低炭素鋼およびP添加固溶強化鋼を溶解依頼し、実験を進めた。継続して研究中であるが、成果の一部を国際会議で発表し、学術論文にまとめInt. J. Materials Researchに投稿し掲載決定しているほか、Materials Science Engineering Aに投稿準備中である。(4)オーステナイト系鋼の強化機構として窒素添加を取り上げ、高窒素鋼と比較のための低窒素鋼の引張・引張疲労試験を行って、窒素添加の影響を示した。窒素添加によって疲労強度が向上するが、引張強度の向上に比べると小さい。また、窒素添加は高加工硬化をもたらすことから、両鋼種にショットピーニングを施して、その効果を調べた。これらの結果を学術論文にまとめweb雑誌(ARPM Journal of Engineering and Applied Sciences)に投稿し掲載になった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
Int.J.Materials Research (formerly Z.Metallkunde) 98
ページ: 209-216
Journal of Materials Engineering and Performance, ASM International. (in press)
Int.J.Materials Research (formerly Z.Metallkunde) 97巻
ページ: 1559-1565
ARPM Journal of Engineering and Applied Sciences 1巻
ページ: 12-21