研究課題
マングローブの葉と陸上植物について、成長や分解に伴う脂肪酸組成の変化を解析し、マングローブに特有の脂肪酸を解明しようとしたが、明確な区別は得られず、両者は類似した脂肪酸を合成する事が示唆された。すなわちこれらの緑葉は16:0、18:1ω9、18:2ω6、18:3ω3を有していることで特徴づけられる。ただマングローブの緑葉は18:1ω9の含有量が他の陸上植物よりも多い特徴がある。メヒルギやヒルギダマシにおいて、全脂肪酸のうち40%が多価不飽和脂肪酸の18:3ω3で占められており、さらに18:1ω9の含有量も多いことはこれらの種の特徴であろう。炭素原子を18個以上有する長鎖脂肪酸と16個有する脂肪酸の比はマングローブ植物を他の陸上植物と区別する根拠になる可能性がある。若いマングローブ植物の緑葉には18:2ω6が多いが、老成すると18:2ω6よりも18:3ω3が増加する。この現象はメヒルギやオヒルギに特に顕著である。葉の老化や分解に伴って18:1ω9、18:2ω6、18:3ω3の減少が顕著である。分解の初期段階では炭素量が少ない脂肪酸量が減少し、炭素量の多い脂肪酸量が相対的に増加するので、これらは分解の程度の指標となりうる。マングローブの葉は大型のカニ類やTerebralia属の巻貝によって摂食を受けるが、比較的新鮮な葉に対する摂食量が高いので、長鎖脂肪酸(例:26:0、28:0、30:0、32:0)が消化されていることを意味する。同時に前述の幾つかのマングローブの指標になるマーカーも消化吸収される。菌類のマーカーを特定するために予備的な脂肪酸解析を行った。18:1ω9、18:2ω6、22:6ω3などがマーカーとして利用できそうな情報が得られているので、今後さらに検討する。これらの研究により食物連鎖に伴って移動する物質の動態が解明され、各動物の植物源が解明されると予測される。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Estuarine, Coastal and Shelf Science 63
ページ: 301-313
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