ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、木材パルプなどの植物繊維が、さらに解繊されナノファイバー化したもので、ナノレベルからミクロレベルまでのクモの巣状ネットワークと極めて大きな表面積が特徴である。MFCを強化繊維とした複合材料は鋼鉄に匹敵する強度をしめす。ミクロフィブリル化のプロセスは主としてせん弾力による解繊で、現状ではリファイナー処理と高圧ホモジナイザー処理の複合で行われているが、製造コストが嵩み、乾燥重量ベースで5000円/kgとなっている。このことから、本研究ではMFCを複合材料強化繊維として広く利用していくために、安価にMFC、あるいはMFC複合コンパウンドを製造する技術を、主として2軸混練機を用いて開発するものである。 昨年度は、ナノファイバー化の促進を目的として、基質選択性を有する酵素処理(エンドグルカナーゼ)をリファイナー処理後のクラフトパルプに行い、二軸混練機でナノファイバー化を試みたところ、短時間にナノファイバー化を進めることができた。しかし、MFCをシート化し、フェノール樹脂を含浸後、積層・熱圧した試料では、曲げ弾性率、曲げ強度は高圧ホモジナイザー処理で得たMFCで得られる強度の6割程度の値であった。このことから、本年度は、前処理としてのアルカリ処理の効果について検討した。併せて、二軸混練機のエレメント構成についても検討を行った。高濃度のアルカリ溶液で処理したリファイナー処理パルプは、二軸混練処理により、高いアスペクト比を有した状態でナノファイバー化されることが知られた。また、アルカリ処理したMFCを用いて製造したフェノール樹脂複合MFC成型体は、曲げヤング率は低下したが、靭性が著しく向上し、結果として破壊まで仕事量が、無処理成型体の1.5-2倍程度にまで増大した。
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