研究概要 |
本研究は、日本の気象学と地震学及び津波研究などを中心として、日本における地球科学分野の歴史的な展開を考察するものである。分析の枠組みとしては、知識生産過程をミクロに観察していくとともに、それを取り巻く社会的・文化的な背景に関するマクロな分析も行う。 まず地震研究については、分析の視野を植民地台湾に広げ、"Seismicity Within and Beyond the Empire : Japanese Seismological Investigation in Taiwan and Its Global Deployment,1895-1909"を執筆した。この論文は、2007年度中にEast Asian Science, Technology and Society : An International Journalに掲載される予定である。 また津浪研究の歴史に関しては、1900年前後の日本において津浪に関する知識がどのように形成されていたのかを分析し、"Representing Tsunamis : Memory and Knowledge of Tsunamis in Japan circa 1900"を執筆した。この原稿は、現在国立シンガポール大学のグレゴリ・クランシー氏を中心とする出版計画の一部となっている。 気象現象と関連しては、近年地球環境の変化と関連して関心が高まっている紫外線に注目し、それにめぐる技術的・社会的な対応を研究した。その試論的な研究として、大正期から昭和初期にかけての日本における紫外線言説を分析した原稿は、『年報科学・技術・社会』第15巻(2006年)に掲載された。 なお、本年度には、日本地震学の歴史的展開に関する分析の枠組みを洗練させ、その成果を2007年1月に東京大学出版会から学術書として刊行した。
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