トルファン写本は世界各地に分散して所蔵されている。ドイツ・ベルリンの国家図書館東方部、同じくベルリンのインド芸術博物館、日本の龍谷大学大宮図書館、中国の新彊ウイグル自治区博物館、さらにトルファン博物館などがそれであるが、これまで各所蔵に関してあらましの調査を行ってきた。またWANG Dingは2000年7月にトルファン文物局の協力の下、一週間にわたり同地の遺跡に対して系統的な調査を行い、それをドイツの旧登録番号及び探険隊の記録文書などと照合することで、現存文書の来源のうち20カ所の特定を行い、表にまとめた。また編号が付されていない文書と漢文以外の文書中に編入された漢文文書に注意を払って研究を進めている。さらにインド芸術博物館に所蔵されるプロシャ探険隊の古い写真群は発掘の待たれる宝庫であるが、その内容についてもほぼ掌握することが出来、今後の研究に役立つ情報を得ることができた。以上のようなトルファン発見資料全体に対する精確な把握を基礎として、トルファンの印刷文献につき研究を開始した。今年度は、(1)ベルリンの吐魯番コレクションから刊本を抜きだし、その書誌に関する情報を網羅したデータベース作成に着手し、(2)その一部について断片の同定を行った。次年度以降も引き続きデータベースの充実に努め、同定を進めるほか、トルファン地域において印刷本がどのような社会的機能を有したかにつき一層徹底した研究を行う予定である。
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